第2回
交通産業、こと自動車事業に多大な影響をもたらした太平洋戦争は昭和20年に終戦をむかえ、各事業者は混乱の中での再スタートを強いられました。こうした背景のもと、戦時統合政策により神奈川中央乗合自動車(現神奈川中央交通)へバス事業の営業権を譲渡していた当社も、事業の再開を期して同社に働きかけ、譲渡路線(一部)をはじめ、8路線の営業権を譲り受けました。まさにゼロからの再スタートでした。 こうして、昭和24年6月に代用燃料車を含む15台のバスをもって営業を再開した当社は、湘南地区内における路線網の整備に並行して横浜方面への路線拡張を推進し、昭和25年に横浜駅、29年には渋谷駅への乗り入れを果たしました。さらに、沿線の観光資源に着目した取り組みとして、29年6月に定期遊覧バスと貸切バスの運行を開始したことにより、バス事業は、鉄道会社から総合的な観光運輸会社への発展を目指す当社の基幹事業に定着しました。 |
車両に見る当社の特徴は、比較的早い時期にボンネットバスから箱型バスへ移行したことで、最後まで在籍したボンネットバスも昭和37年に引退いたしました。その反面、ワンマンバスへの移行は遅く、昭和39年に始めて導入しました。そもそもワンマン化は、求人難を背景とする車掌要員不足の対応策として普及し始めたもので、当社も同様の理由から検討を重ねていましたが、保安面と旅客サービスの低下を懸念するあまり出遅れたのであります。 そして、昭和40年代以降のバス業界ではワンマン化が一般化されるようになりますが、その導入経緯は当初の目的とは異なり、経営効率の向上策のひとつとして普及するのであります。 |
『江ノ電の100年』は、開業100周年記念事業の一環として平成14年9月に発刊された江ノ島電鉄のオフィシャル史料です。400ページにわたるその構成内容は、鉄道以外の事業にも焦点をあてることにより社史としての平準化をはかり、新たに発掘された史料や貴重な写真も多数収録されております。 |