第1回
江ノ電は、ふたつの江ノ(之)島電気鉄道とふたつの電力会社の手により100年の歴史を育んでまいりましたが、本編では両江ノ島電気鉄道の起源に焦点を当て、その誕生経過と育成契機を振り返りたいと思います。 |
しかし、開業に至るまでの道のりは険しかったようで、沿線にあたる川口村会(片瀬町を経て昭和22年藤沢市に編入)による反対決議や競合する人力車組合の反対運動など、幾多の困難が待ち受けていたと言われています。前者は、すでに鎌倉~藤沢間の鉄道敷設免許を取得していた鎌倉鉄道の存在に加え、江之島電気鉄道が軌道の敷設を予定していた村内の道路が狭いという理由で容認されず、一方後者は営業上の死活問題として反対していたそうです。そして、こうした状況にありながら同社が幸運だったのは、計画経路に隣接する鵠沼村が江ノ電の建設に好意的な姿勢を示していたのと、鎌倉鉄道が鉄道の建設を断念したほか、両村の有志から建設用地の提供を受けたことにより道路上に軌道を敷設する必要がなくなり川口村の反対要因が解消されたことが挙げられます。さらに、険悪化しつつあった人力車組合との軋轢も自由党議員の仲裁によって和解に至り、これを機に開業機運は高まっていきました。 |
ところで、江ノ電は日本で6番目に開業した電気鉄道ですが、初めてドイツ製の電装機器を装着するなど新機軸を盛り込み、開業に向けて用意された4両の電車も当時の常識を覆すビューゲル式集電装置を採用したことにより異彩を放っていました。また、当時は電気事態が貴重な存在であったために、電力供給源として発電施設の建設も不可欠となり、軌道敷設工事に並行して発電所の建設に着手し、35年8月中旬から実施された試運転より送電を開始しました。 |
『江ノ電の100年』は、開業100周年記念事業の一環として平成14年9月に発刊された江ノ島電鉄のオフィシャル史料です。400ページにわたるその構成内容は、鉄道以外の事業にも焦点をあてることにより社史としての平準化をはかり、新たに発掘された史料や貴重な写真も多数収録されております。 |