第2回
デビュー当時に掲げられたヘッドマークのとおり、江ノ電の新しい顔として定着した1000形は、その後も改良を重ねながら増備が続きました。まず、昭和56年12月に就役した1101号車では冷房機器の設置準備が施され、翌年、当社初の冷房車となっています。続いて登場(昭和58年12月)した1201号車では、冷房装置が標準装備となったほか、前照灯の形状が丸型から角型へ変更され、客室シートの色も赤とオレンジの千鳥調となりました。
性能面も含め大きな変化が見られたのは、昭和61年4月に登場の1501号車及び同車の仕様を踏襲して翌62年12月に就役した1502号車からで、初の試みとしてカルダン駆動方式が採用されました。さらに、1500形と称されるこれらグループでは、駆動方式以外にも、電気ブレーキ・ディスクブレーキ・レール塗油装置(1501号車のみ)の装着やステンレス材の多用による腐食防止対策が施されています。そして、こうした高性能化以上に、1500形がひときわ注目を集めたのは、アイボリーを基調に赤とオレンジの帯を配した車体の色調でしょう。なお同形は、一般公募のすえ『サンライン号』と命名され、平成2年まで同色調で運行されました。
増備を重ねることにより名実ともに江ノ電の主役となった1000形は、そのスマートな車体を利用して広告電車となることが多く、これまでに様々なカラーリングが施されました。これによって、本来の色調が恋しくさえ思えることもありますが、広告掲出期間が終了すれば標準色に戻されますので、むしろ、古都に映える江ノ電カラーに、明るい湘南をイメージした万華鏡のような華やかさが加わり、「次の電車は何色だろう」といった楽しみが増えたのではないでしょうか。
ところで、およそ半世紀ぶりの新車・最初の冷房車・最初の高性能車と、エポックメーカー的役割を果たしてきた1000形は、早いもので平成16年12月に25歳となりました。それでも、依然当社を代表する車両であるには違いなく、全車両に対する在籍比率も4割を占めています。また、1001・1002・1101・1201号車においては、当社に残る唯一のつり掛け駆動車ですが、全国的に見ても貴重な存在になりつつあります。そして、モーターが奏でる独特な音色は懐かしくもあり、郷愁的な“昭和の音”と言えましょう。
― 完 ―
(参考文献『江ノ電の100年』)
『江ノ電の100年』は、開業100周年記念事業の一環として平成14年9月に発刊された江ノ島電鉄のオフィシャル史料です。400ページにわたるその構成内容は、鉄道以外の事業にも焦点をあてることにより社史としての平準化をはかり、新たに発掘された史料や貴重な写真も多数収録されております。 |